PEEK冠の保険適用、部位と条件は?2026年6月改定後の点数まで

PEEK冠が保険で使えるのは大臼歯の単冠で、1歯の合計は生活歯の例で2,810点です。では、2026年6月の改定で何が変わったのか。
調べると、2023年の保険適用のころの説明が今も多く出てきます。この記事では、いまの告示と通知の条文から、部位・条件・点数の内訳までをまとめます。
保険で使えるのは大臼歯の単冠

PEEK冠は、診療報酬では「M015-2 CAD/CAM冠」のうち、CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)を使うものです。材料価格の留意事項通知には、(Ⅴ)は「大臼歯に使用した場合に限り算定できる」と書かれています。
- 告示では1歯につき算定する全部被覆冠で、エンドクラウンは別の区分です。
- 材料料の別紙1でも、(Ⅴ)の点数があるのはM015-2の大臼歯の欄だけです。
- 上下顎の別や、第一・第二・第三大臼歯の別は、通知には書かれていません。日本歯科医学会の「基本的な考え方」(2026年3月)は、適応症を「全ての大臼歯」と書いたうえで、適切な保持形態・抵抗形態を付与でき、過度な咬合圧を回避できることを挙げています。
- M015-2の通知に、金属アレルギーや医科との連携を条件にする文はありません。
2026年6月に変わったのは材料Ⅲの条件

いまの通知の(Ⅴ)は「大臼歯」とだけ書かれています。2026年6月の改定で範囲が広がったと説明されているのは、並んでいる(Ⅲ)のほうです。
| 時点 | 材料(Ⅲ)を大臼歯に使う条件 | 材料(Ⅴ) |
|---|---|---|
| 2023年12月(第1報の時点) | 金属アレルギー症例以外では、全ての第二大臼歯が残存し咬合が安定している場合のみ | 大臼歯 |
| 2026年6月から | 全ての大臼歯に応用可能 | 大臼歯 |
- 2023年の欄は日本補綴歯科学会の「PEEK冠に関する基本的な考え方(第1報)」、2026年の欄は日本歯科医学会の「基本的な考え方」の説明です。2024年改定時点の通知の原文は、この記事では確かめていません。(Ⅴ)の条文が改定の前後で同じかどうかも同様です。
- 算定のうえでは、大臼歯の単冠に使える範囲は(Ⅲ)と(Ⅴ)で同じ形になりました。「第二大臼歯がないのでPEEK冠」という説明は、2026年6月より前の条件に基づくものです。
- 日本歯科医学会の文書は、部分床義歯の支台歯と事実上の最後臼歯を「考慮すべき事項」に挙げています。材料を選ぶ判断は、症例ごとに通知と学会の文書で確かめてください。
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1歯の点数は生活歯2,810点、失活歯2,650点

2026年9月時点の点数で、告示と通知の項目を足すと次のようになります。大臼歯に(Ⅴ)を使い、連合印象で、接着材料が標準型、クラウン・ブリッジ維持管理を届け出ている医療機関の例です。
| 項目 | 生活歯(点) | 失活歯(点) |
|---|---|---|
| 歯冠形成(非金属冠) | 306 | 166 |
| CAD/CAM冠の形成の加算(注5・注8) | 490 | 470 |
| 印象採得(連合印象) | 64 | 64 |
| 咬合採得(歯冠修復) | 18 | 18 |
| CAD/CAM冠(2以外の場合) | 1,200 | 1,200 |
| 材料料(Ⅴ) | 615 | 615 |
| 装着(歯冠修復) | 45 | 45 |
| 内面処理加算1 | 55 | 55 |
| 接着材料(合着・接着材料Ⅰ 標準型) | 17 | 17 |
| 合計 | 2,810 | 2,650 |
- 材料(Ⅲ)は材料料が273点なので、同じ条件の合計は生活歯2,468点、失活歯2,308点です。差は材料料の342点です。
- 材料料の(Ⅴ)は、2026年3月適用予定の別紙1でも、6月・9月の別紙1でも615点です。材料価格は1個6,150円です。(Ⅲ)は3月適用予定の316点から、6月に273点へ下がりました。
- 自動練和型の接着材料は36点で、合計は19点増えます。
- 光学印象で算定するときは、連合印象と咬合採得の代わりに光学印象150点です。施設基準と届出は歯科の光学印象、施設基準の要件は?にまとめています。
- 支台築造とクラウン・ブリッジ維持管理料は、上の表に含めていません。
- 金パラや銀合金の材料料は随時改定で動きます。金属の点数は金パラのクラウン・インレーは何点?と歯科の銀合金、保険点数は?に並べています。
材料ⅢとⅤで通知の書き方が違う場面

大臼歯の単冠の範囲は同じ形になりましたが、通知と別紙1で、(Ⅲ)と(Ⅴ)の書き方が違う場面があります。
| 場面 | 材料(Ⅲ) | 材料(Ⅴ) |
|---|---|---|
| エンドクラウン | 大臼歯に使用する場合に算定 | 条文に書かれていない |
| 下顎大臼歯の分離切断後の連結した冠 | 1つの(Ⅲ)から製作する場合の規定あり | 条文に書かれていない |
| 分割抜歯後の冠(上顎で2根を残す場合) | 規定あり | 規定から除かれている |
| 大臼歯のCAD/CAMインレー | 別紙1に273点 | 別紙1に欄がない |
分割抜歯後の規定は、書き出しが「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)を使用する場合を除く」となっています。(Ⅴ)をこれらの場面で算定できるかの判断に迷うときは、地方厚生局か審査支払機関に確かめるのが確実です。
規格と形成量は材料Ⅲとどう違うか

材料の定義は、厚労省の「特定保険医療材料の定義」の通知に数字で書かれています。
| 項目 | 材料(Ⅲ) | 材料(Ⅴ) |
|---|---|---|
| 組成 | シリカ微粉末と無機質フィラーの合計が質量分率70%以上 | PEEKに無機質フィラーを質量分率17〜25%配合 |
| ビッカース硬さ | 75HV0.2以上 | 25HV0.2以上 |
| 3点曲げ強さ(37℃水中7日後) | 240MPa以上 | 180MPa以上 |
| 吸水量(同) | 20µg/mm³以下 | 10µg/mm³以下 |
| 曲げ弾性率(同) | 定義になし | 5GPa以下 |
形成については、日本歯科医学会の文書がPEEK冠の相違点を分けて書いています。
| 部位 | CAD/CAM冠用材料(Ⅰ〜Ⅳ) | PEEK冠 |
|---|---|---|
| 咬合面のクリアランス | 1.5〜2.0mm以上 | 1.0〜1.5mm以上 |
| 軸面のクリアランス | 1.5mm以上 | 1.0mm以上 |
| 辺縁部のクリアランス | 約1.0mm以上 | 約0.8mm以上 |
色について、日本補綴歯科学会の第1報は、PEEKは光を透す性質を持たせにくく、見た目の面では従来のCAD/CAM冠に及ばない、という趣旨を述べています。
届出・装着・シールで確かめること

- 施設基準の届出:CAD/CAM冠として様式50の2で届け出ます。材料(Ⅴ)だけの別の届出の規定は、通知にはありません。
- 施設基準の要件:補綴の専門の知識と3年以上の経験を持つ歯科医師が1名以上いること。院内に装置があれば歯科技工士を配置していること。院内になければ、装置のある歯科技工所と連携していること。
- 装着:(Ⅴ)は、サンドブラスト処理とプライマー処理を行い、接着性レジンセメントで装着した場合に装着料を算定する、と通知に書かれています。保険適用の接着性レジンセメントはいずれも使え、内面処理加算1も算定できるという回答が、2023年12月の疑義解釈(その62)にあります。
- シール:(Ⅲ)(Ⅴ)を大臼歯に使ったときは、製品に付属する、材料名とロット番号等の文書(シール等)を保存して管理します(診療録に貼付する等)。材料価格の留意事項通知の058に書かれています。
- 維持管理料:CAD/CAM冠は、クラウン・ブリッジ維持管理の対象です。維持管理を届け出ていない医療機関では、第12部の通則8により所定点数の100分の70で算定します。
- 金属アレルギーと維持管理(2023年の回答):疑義解釈(その62)は、金属アレルギーの患者に(Ⅴ)を使った場合は維持管理の対象外と答えています。
- 同じ点のいまの文面:理由に挙げられた通知の(4)のロは、いまの文面では高強度硬質レジンブリッジだけが書かれています。令和8年の疑義解釈(2026年10月28日のその14まで)を検索した範囲では、(Ⅴ)についての問は見つかりませんでした。該当するときは地方厚生局に確かめてください。
原文の確かめ方
- 留意事項通知の別添2のPDFを開く(出典の2つ目)。150〜151ページがM015-2、143ページが装着です
- 告示の歯科点数表のPDFを開く(出典の1つ目)。83〜87ページに形成・印象・装着、89ページにM015-2があります
- 材料料は、2026年8月31日の通知の9ページにあります(出典の3つ目)
- 部位の限定とシールの管理は、材料価格の留意事項通知の56ページ目の058にあります(出典の4つ目)
- 新しい疑義解釈と訂正は、厚労省の改定のページの「疑義解釈・訂正通知」に順に載ります(出典の最後)
出典
- 厚生労働省「歯科点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)」
- 厚生労働省 保医発0305第6号(令和8年3月5日)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項」(5月29日の訂正後)
- 厚生労働省 保医発0831第1号(令和8年8月31日)「「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」別添3(9月1日からの別紙1「材料料」)
- 厚生労働省 保医発0305第1号(令和8年3月5日)「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」058 CAD/CAM冠用材料
- 厚生労働省 保医発0305第2号(令和8年3月5日)「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正に伴う特定保険医療材料料(使用歯科材料料)の算定について」別紙1(6月1日から適用)
- 厚生労働省 保険局医療課 事務連絡(令和8年1月30日)「「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正に伴う特定保険医療材料料(使用歯科材料料)の算定について」の一部改正について」(3月1日から適用する予定の別紙1)
- 厚生労働省「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第73号)」
- 厚生労働省 保医発0305第4号(令和8年3月5日)「特定保険医療材料の定義について」058 CAD/CAM冠用材料
- 厚生労働省 保医発0305第8号(令和8年3月5日)「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」第57の6
- 日本歯科医学会「CAD/CAM冠に関する基本的な考え方」(令和8年3月)
- 日本補綴歯科学会「PEEK冠に関する基本的な考え方(第1報)」(令和5年12月)
- 厚生労働省 保険局医療課 事務連絡(令和5年12月18日)「疑義解釈資料の送付について(その62)」(日本病院会の掲載)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(疑義解釈その1〜14・訂正通知の一覧)
この記事の数字と日付は2026年10月31日に厚生労働省などの原文で確かめました。2027年3月31日以降は内容が古くなるため、書き直します。